近所の山にきた。
俺にとっては到達すべき頂上のない、
小さな山の連なり。
薄く雪をかぶっている。
何十回も歩いた山肌には、
クマが来る木や、主人のいない鳥の巣や、
朽ち果てた人の痕跡が
ひっそりと散りばめられている。
見晴らしのいい尾根道よりも
俺にとっては山肌こそがこの山だ。
去年はあまり咲かなかった。
今年はあの木に
沢山の熊が登るかな。
隣の尾根の花や実りは、去年は良かったようだけど、
今年はどうかな。
俺の目の届かない、どこかの何かがよく実って、
熊を見ない年になるかもしれない。
いつもそうだけど、
年の初めに来る山に、
クマの姿を
つい想像してしまう。
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