2020/04/15

名残桜。




今日撮った。まだ桜が咲いている。
桜並木に挟まれた川の前に住んで、もうずいぶん経つけど
今年の桜は息が長いような印象がある。


もともと、桜の花はそう好きだというわけでも無かった。
カメラを始めて、写真にのめりこむうちに最も身近な被写体として
春先は桜にレンズを向けていた。




息子が生まれたのは5年前の春だった。
妻を見舞いに、僕は病院まで、花びらの舞う桜並木の下を
毎日急ぎ足で歩いた。
あの時の、不安、妻の微笑み、母親になりゆく者のみずみずしい力、
無事生まれて、産後の妻の無事を確認してようやく訪れた深い安堵。
全てが散る桜の花びらと共に思い出される。

その後、僕は撮影に出ることが叶わない時期があって
この桜並木の下で、小さな鳥や虫を撮り続けていたこともあった。
嬉しいときも辛いときも、桜並木に挟まれたこの川は
僕を救ってくれていたように思う。

それは、かまびすしい都会に足を向けることのできない
今現在も同じだ。
満開の季節が過ぎた今、人気も少なくなり
誰にも近づくことなく静かに歩くことができる。




昨年の暮れに、僕たち家族の生活は激変した。
戻ってこられるのかわからない。そんな不安の中で寒い季節を過ごした。
今、奇跡的な巡りあわせと、生命の強さで家族は家に戻った。
失ったものは大きい。でも一番大切なものは手元に残ったままだ。
僕たちは手を握って、涙ぐみながら桜並木の下を歩いた。
今年もこの桜を見ることができた。
家族一緒に、見ることができた。

今、世界が激しく揺さぶられている。
戻ってこない僕たち家族の日々と同じように、
世界も変わっていくだろう。
でもその先は、上り坂はあったとしても
きっとささやかな幸せにほほ笑むような
嬉しい日々も待っている。

絶望は感じない。
失ったものの大きさに、生命の有限を感じて、残ったものの大切さを知った。
今、生きていく幸せを浮き彫りになる形で強く感じている。
まだ桜は咲いている。今年も楽しむことができた。
ありがとう。




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