2020/07/27

the alpine bear.





I climbed mountains over & over again,
for getting the encounter with bears which comes to the ridge line to eat alpine plants.
良い出会いを求めて、ひたすらに歩くということ。


Nikon D5 + AF-S Nikkor 200-500mm f/5.6E ED VR
Hokkaido Japan / Sep.2017









9月初頭、日没間近。
稜線上にいた僕は、重いザックを背負ってテント場へ急いでいた。

突如「バキバキ」と木の枝を折るような断続的な音が耳に入った。
辺りは既に薄暗い。静かにクマスプレーを構え、やりすごそうとした。

ヒグマは遠ざかることなく、高山帯の硬い茂みの中から
僕の目の前に出てきた。そのクマはなかなかの体格で、
高山の風景の中に王者の様な存在感で良く映えた。

距離は20m程だっただろうか。
目が合った直後、彼がどう出るか
スプレーを構えたまま僕は待った。

彼は僕に一瞥をくれると、ゆっくりと通り過ぎて行った。
その穏やかさを確認してから、スプレーを構えたまま
数枚シャッターを切る。彼はやがて別の茂みの中に姿を消した。

高山帯は見晴らしが良いように感じるが、ヒグマが身を隠すような場所は
実はいくらでもある。常に油断はできないと考えていい。
しばらくじっとして、彼の存在感が消えたのを確認してから、ようやく僕は安堵した。

写真は被写体との距離感が最も重要な要素の一つだろう。
撮りたい写真には、それに合わせた距離感がある。
今回の場合は、それが近過ぎた。それから時間帯的に光量も不足していた。
ベストとは言い難い。でも、得難い出会いであることに違いはなかった。

相手が野生動物の場合、被写体との距離感をコントロールすることは難しい。
広大な山肌の中で、撮影機材を構えて彼等に理想的な距離で出会うというのは
いったいどれほどの確率になるのだろう。
ヒグマの生態や山の植生を調べ、彼等をできうる限り理解した後は
幸運を待ちながらフィールドを歩き続けるしかない。

出会いは一瞬だった。
2012年、山の上でのヒグマの姿を撮りたいと、
テントを背負って夏の山に登るようになってから
ちょうど5年の月日が流れていた。


















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