2018/07/10
くまさん、くじらさん。
ここ十日ほど、家に引きこもって作業をしている。
撮影に出られないのはもどかしいが、必然的に
子どもと過ごす時間が長くなる。
寝る前に「おはなし」をねだられるようになった。
出会ってきた動物の話がほとんどだが、
中でも聞きたがるのは「くまさんのお話」「くじらさんのお話」だ。
自らの足で森に分け入って出会ってきたクマ達には
一頭毎に違った出会い方と、そこに至るまでのプロセスがある。
草原で追いかけっこをする二頭のクマ。
梢の下ですやすやと眠っていた大きなクマ…。
それぞれの状況をつぶさに思い出しながら、
一つひとつ丁寧に話して聞かせる。
クジラの話もお気に入りだ。
中でも、アラスカでテントのすぐそばでブロウしていた
クジラの音で眠れなかった話が好きらしい。
「おはなし」を聴いている間、息子は一点の空をじっと見つめている。
幼い想像力で、その情景を懸命に脳裏に描いているのだろう。
「お昼寝のくまさん、写真を見るかい?」と言おうとしたが、
その横顔を見て、思わず口をつぐんだ。
映像は無いほうがいい。…そう思えたからだ。
写真に備わるストーリーはプロセスが作る。
そして、全てが鮮明に見えないことが、
見る側の想像力を刺激して、写真を写真たらしめている。
そんな当たり前の二つの大切な要素を、
三歳の子どもへの寝物語が、改めて思い起こさせてくれた。
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