家族がいること。

今日は一日、家族で過ごした。
母と父が一緒にいると、心なしか、息子は嬉しそうだ。

父は撮影で長く家を空けることが多く
母は仕事を抱えて忙しい。
そういう家族だから、尚更なのだろう。




月並みなことを言うのかもしれないが
家族がいると、それだけで何か救われたような気持ちになる。

野生動物の撮影がうまく行かなくて、思いつめると
身近な人が、どんどん自分の傍から
離れて行ってしまうような気がする。
いや、もちろんそれが
錯覚であって欲しいという気持ちもあるのだけれど。

「このままでいいはずがない」「もう時間がない」「俺はダメだ」
自己否定という思考が心の片隅に
ザックの底にあるバッテリーの切れたカメラみたいに
重くのしかかってくる。

でもアイスクリームを片手に、無邪気にはしゃぐ息子の存在は、
そんな父親の沈んだ思考を許さない。

うまく言えないけれど、
親の自己否定は、息子の存在否定に繋がりかねない。
自らの遺伝子を受け継いだ、
まだ小さく、純粋な命の否定を、親の心理は許せない。
「この子が、生まれてきてもよかったのか」
なんて、僕は考えたこともない。

それは、優しいけれど、深い、強制的な自己肯定の力だ。
前を向いて生きていかないといけない。
毎日を全力で走り回る、
前とか後ろとか、上とか下とか、まだわからない
無邪気な命が傍にいるから。

家族がいるとはこういうことなのだな、と
懸命にアイスクリームを頬張る息子を見て、ぼんやりと思う。
僕にも家族がいて良かった。

明日からまた。




Japanese only. 2018年10月　於・新宿
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